第2章 封印した過去とグチ友

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 翌日、職場で紗英に会ったら、晴美の件を話そうと思っていたが、珍しく紗英は休みだった。  私の方も、昼過ぎに薫花が熱を出したと保育園から連絡が入り、迎えに行かなくてはならなくなった。  急な休みや早退に、柔軟に対応してもらえるのがこの職場の良いところだ。夕方からは、学生のバイトも来るので、人員も増える。私は薫花の元へ急いだ。  運悪く、かかりつけの近所の小児科は休診日だった。駅の反対口にある総合病院までは、少し距離がある。真っ赤な顔でフーフー息をしている薫花を自転車に乗せていくのは可哀想で、私は滅多に乗らない車を使うことにした。  若い頃はそれなりに運転していたのだが、颯介の趣味であるスポーツカータイプの自家用車は、乗りづらく、結婚してからは、すっかりペーパードライバーになっていた。 「シートベルトを締めて、サイドミラーを出して……」  何年かぶりの運転に、ひどく緊張し、声に出して手順を確認した。  だが、いざ出発という時に、グワングワンと激しい音がして、黒い物体が視界を遮った。 「うわっ!!」  私は思わず叫んだ。早速、ウインカーとワイパーの操作を誤ったようだ。  バックミラーに薫花の心配そうな顔が映る。  私は「大丈夫よ。寝てなさい」と声をかけ、そろそろと走り出した。
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