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「夫婦はしょせん他人って言うけど、うちの夫婦は間違いなく血より濃い関係だと思う」
紗英は話を続けた。
「だからさ、ひとくくりに夫婦って言っても、人によって全然違うんだよ。日菜も一度くらい失敗したからといって、何もかもダメだって思うことはないんじゃない?」
「うん、そうだね」
私にエールを送るために、紗英は自分の辛い過去を話してくれたのだ。そのことが、私はとても嬉しかった。
店を出て、駅へ向かい歩いている途中、紗英は急に思い出したように、
「そういえば、カイリって、最初にうちの事務所に来た時、探偵って殺人事件とかの捜査をするんだって思ってたんだよ。馬鹿だよねー」と言って笑った。
「へえ、それはちょっと……変わってるわね」
探偵業に特に興味のない私でも、そんなことは小説の中だけだと知っている。私も思わず笑ってしまった。
そういえば、カイリは前に夢を馬鹿にされたとか言ってたな。あれも本当だったのだと思った。
「あいつさ、本当に馬鹿だけど、まっすぐないい奴だから、信じても大丈夫だと思うよ」
紗英に言われ、私はカイリの少年のように澄んだ瞳を思い浮かべた。
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