第二十二歩目

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謝ってもらう必要なんて、全然ないけれど。 正直なところ、僕がここにいてもいいのかなって不安になることはあった。 「そのことに気づいたから、アイツが座っていたソファーも。 アイツの写真を飾っていた本棚も。 アイツが触れたものは、全部捨てたんだ……」 チラリとキッチンを見てみれば、棚に置いてあった食器や冷蔵庫でさえもその姿を消していた。 「幸平、俺と一緒に暮らそう」 「え……?」 ビックリして、僕は思わず龍矢さんを見上げた。 「日当たりの悪い、あのマンションにはもう帰らなくていい。 だからって、この部屋に住むのでもなくて……。 二人で暮らすための、新しい部屋を探すんだ。 部屋が決まったら、一から家具を揃えよう。 二人で食事をするテーブル。 一緒に眠るベッド。 一緒に座るソファー。 食器や箸なんかの小さな物も、ひとつひとつ……。 二人で探そう」 これは、夢? 夢かもしれない。 だって、僕にこんな幸せな日が訪れるなんて……。 「幸平……」 「はい……」 そう返事をすると、急に真剣な顔になる龍矢さん。 僕は、ゴクリと喉を鳴らした。 「一生、俺のそばにいて欲しい。 だから……。 どうか俺と 結婚してください」
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