第一歩目

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その時、僕の後ろでコンコンとドアをノックする音が聞こえてきた。 「失礼します」 誰かが、この会議室に入って来たようだ。 優しく響く、心地良い声だった。 それに、なんだか爽やかで甘い香りがする。 一体誰……? 「柏木君、紹介するよ。 これからキミの上司になる結城(ゆうき)課長だ」 人事部長に言われて、僕は慌てて椅子から立ち上がって振り返った。 「初めまして。営業第一課の結城です」 わ……。 すごく背が高い……。 180cmはゆうに超えていそう。 「○×営業所から参りました柏木と申します。よろしくお願いします」 ペコリと頭を下げてから再び顔を上げると、結城課長はにっこりと目を細めて、眩しいほどの笑顔を僕に向けていた。 「柏木君。結城課長は去年、27歳にして本社営業部第一課の課長に就任したんだ。 同期の中でも、断トツのスピード出世だったんだよ。 若い課長だからといって、心配することはないよ。 安心して、結城課長に付いて行けばいい」 27歳で課長……? そんな人、そうそういないと思っていたけど。 いるところには、いるんだね……。
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