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「柏木君と付き合っていたのは、僕です。
でも、僕は彼を振ったつもりは全くありません。
彼が僕の幸せのためだと言って、勝手に僕のそばから離れて行ったんです。
僕はそんなこと、一切望んでいないのに……」
そう言われると、チクンと胸が痛む。
僕は龍矢さんのためと言いながら、龍矢さんの気持ちを全然わかってあげられていなかったから……。
「だから今日、僕は彼を迎えに来ました。
彼さえまだ僕を受け入れてくれるなら、僕は彼を東京に連れて帰ろうと思っています。
仕事にも、きちんと復帰させるつもりでいます。
それが僕にとって一番の幸せであり、彼にとってもそうであると信じています。
だから……」
「だから……?」
僕がそう尋ねると、龍矢さんはなぜかスッと姿勢を正して深呼吸をした。
その姿が凛としていてとても綺麗で、僕はゴクリと喉を鳴らした。
「幸平を僕に下さい。
僕が幸せにしますから。
ずっとずっと大事にしますから。
籍を入れることは、法律上出来ないけれど。
一生、一緒にいることを許してください。
そう言って、頭を下げたんだ……」
「龍矢さん……」
こんな真剣な龍矢さんを、僕は初めて見た。
きっと今と同じ態度と波動で、両親に話してくれたんだろう。
そんな龍矢さんを見ていたら、僕は自然に目に涙が溜まっていた。
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