第二十一歩目

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「突然俺にそんなことを言われて、ご両親はさぞ驚くだろうと思ったんだけど。 幸平さえ幸せなら、それが一番いいって言ってくれたんだ。 昔からあまり欲がなくて、いつも寂しそうな顔をしている幸平のことが、ひどく心配だったんだって。 でも……。 先月お前に電話したお母さんが、お前の声がいつになく元気だったから。 “あぁ、やっと幸平も自分の居場所を見つけたんだ”と思って、喜んでいたらしい。 結城さんがそばにいてくださったからなんですねって言われて、ちょっと恥ずかしかったよ」 そう言えば、そうだ。 龍矢さんと付き合って間もない頃、久しぶりに母から電話があった。 あの時に母さん、元気そうねってすごく喜んでくれたっけ。 それなのに、その数週間後に突然実家に帰ったから、さぞビックリしただろうな……。 「なぁ、幸平」 「はい?」 「俺、今回長い夏休みをもらっただろう?」 「あ、はい。そうですね」 第一課の中でも最長のお盆休みだった。 「あれってさ。 俺の両親やきょうだいにお前とのことを話して、わかってもらうためだったんだ……」
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