第二十一歩目

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「え……?」 うそ。 龍矢さんの家族に僕の話をするために、あんなに長い休みを取っていたの? 「結論から言うとさ……。 お前が決めたことならそれでいいって言われたんだ」 「そ、うなんですか……?」 龍矢さんは、うんと頷いた。 結論しか言わないということは、きっとそこに至るまでに色んな議論が交わされたんだろうな。 きついことも言われたかもしれない。 でも、それを僕に話さないところが、龍矢さんの優しさだよね。 「俺の家族も、幸平の家族も。 俺達が東京で一緒にいることに異論はないけど。 近所や親戚には、さすがに大っぴらには出来ないみたいだ。 じいちゃんには、地元の友達には絶対に黙っておけって念を押されたよ」 「そ、そうですよね。 変な噂が立ったら、龍矢さんのご家族の立場が悪くなりますもんね……」 「でもな、正月に幸平を連れておいでって言われたんだ。 ウチの母親が、得意料理を振るまってくれるらしい。 俺の母親って昔から俺のことを溺愛してたからさ。 いつか俺を嫁に取られるのが心底嫌だったんだって。 でも相手が幸平なら、息子がもう一人増えたみたいで嬉しいってさ。 俺の母親って、ちょっと変わってるよな」 そう言って龍矢さんは、クスクスと笑った。
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