第二十二歩目

4/20
前へ
/334ページ
次へ
「え……?」 龍矢さんの部屋に足を踏み入れた途端、僕はその場に立ち尽くしてしまった。 なぜなら……。 以前あったはずのベッド、机、ソファー、本棚が無くなっていて。 壁際に段ボールが山積みになっていたから。 「龍矢さん、引っ越すんですか?」 明らかに、これって引越しの準備だよね? どうしてなの……? 「うん、引っ越そうと思ってる」 うそ……。 まさか龍矢さん、違う部署に転勤……? だとしたら、どうしよう。 僕達、遠距離恋愛になってしまうの……? 「幸平」 そう言うと龍矢さんは、僕に向かい合うようにして立った。 「今までごめんな……」 「え……?」 何? ごめんって、どういう意味? 「俺のこの部屋ってさ。 いずみの思い出で、いっぱいだっただろう?」 「あ……」 確かに、龍矢さんの言う通りだ。 あのカウチソファーは、かつていずみさんが座っていた場所だったし。 おそらくベッドも……。 「そんなところに、俺は何度もお前を呼んだんだ。 こんな場所で、どんなに俺が幸平に好きだと伝えたところで、まだいずみに未練があると思われても当然だよな……。 だから、ごめん……」 「龍矢さん……」
/334ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2521人が本棚に入れています
本棚に追加