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「え……?」
龍矢さんの部屋に足を踏み入れた途端、僕はその場に立ち尽くしてしまった。
なぜなら……。
以前あったはずのベッド、机、ソファー、本棚が無くなっていて。
壁際に段ボールが山積みになっていたから。
「龍矢さん、引っ越すんですか?」
明らかに、これって引越しの準備だよね?
どうしてなの……?
「うん、引っ越そうと思ってる」
うそ……。
まさか龍矢さん、違う部署に転勤……?
だとしたら、どうしよう。
僕達、遠距離恋愛になってしまうの……?
「幸平」
そう言うと龍矢さんは、僕に向かい合うようにして立った。
「今までごめんな……」
「え……?」
何?
ごめんって、どういう意味?
「俺のこの部屋ってさ。
いずみの思い出で、いっぱいだっただろう?」
「あ……」
確かに、龍矢さんの言う通りだ。
あのカウチソファーは、かつていずみさんが座っていた場所だったし。
おそらくベッドも……。
「そんなところに、俺は何度もお前を呼んだんだ。
こんな場所で、どんなに俺が幸平に好きだと伝えたところで、まだいずみに未練があると思われても当然だよな……。
だから、ごめん……」
「龍矢さん……」
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