2513人が本棚に入れています
本棚に追加
・
・
・
「柏木さ~ん、第一課宛の郵便物で~す」
「あ、こっちはお荷物で~す」
通路から媚びるような声を出して、柏木に声をかける総務の女の子二人。
柏木は仕事の手を止めて、カウンターに向かった。
「これで全部ですか? ありがとうございます」
荷物を受け取った柏木は、にっこりと笑った。
柏木の笑顔に、顔を真っ赤にさせる二人の女子社員。
立ち去った後で、キャーという声が通路に響いていた。
「なぁ、柏木」
俺は、みんなのデスクに郵便物を配っている柏木に声をかけた。
「それって、アシスタントさんの仕事だろう?
柏木がやんなくてもいいって」
「そうよ、柏木君。あたし達アシスタントがやるわよ」
向かいに座る八田ちゃんが言った。
「でも渡されちゃうと、そのままにしておけなくて」
そう言って柏木は、残りの郵便物もあっという間に配ってしまった。
そんな柏木を遠目に見ながら、八田ちゃんが怒ったようにフンと鼻から息を吐いた。
「最近の総務の子達、一体何なのかしら。
確かにカウンターから一番近い席にいるのは、柏木君だけどさ。
近くにあたしがいるのに、完全に無視して柏木君に声をかけるのよ。
っていうかさ、前は無言でボックスに入れるだけだったのに、どういう風の吹き回し?」
最初のコメントを投稿しよう!