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「なぁ」
これが僕が担当するリストか。
すごい量だな……。
さすがは都会。
田舎の営業所とは大違いだ。
「なぁ、柏木。
おいっ、聞いてんのか、柏木!」
「は、はいっ!」
ビックリして思わず背筋がピンと伸びた。
「ちょっと何なのー? さっきからずっと呼んでんのに」
「す、すみません」
いけない。
僕って集中すると、周りの声が聞こえなくなるんだよね。
「気になるから教えて欲しいんだけど、どうしてこんな時期に異動になったの?」
「え……?」
「4月からならわかるんだけどさー、なんで2月?」
「さ、さぁ……。人事の決定なので、僕にはわからないです……」
「わかった! 何か問題を起こしたんでしょー?」
僕と本村さんの話に割って入って来たのは、僕の向かいに座る八田さんという女性。
さっきアシスタントだと紹介された。
「八田ちゃん、失礼だなあ。何か問題があるんだったら、本社に来るわけねーじゃん。
しかも、ここはウチの会社の花形部署だぞ」
「あぁ、そっか。もし問題起こして異動になるなら、普通は左遷だよね」
「そーだよ」
2月の異例の人事異動。
色々言われることは覚悟していたけど。
こうして面と向かって言われると、やっぱり良い気はしないよね。
ふぅとため息をついたその時、爽やかな香りと共に誰かが僕の肩にポンと手を置いた。
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