第1章 恋に落ちて

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寒さで目が覚めた。 吹き込む風と小雪が家の隅に吹き溜まりを作っている。 道理で寒いわけだ。 まだ10月なのに初雪が降るのは、北国ならではの季節替わりのきまぐれ。 そのきまぐれのせいで 収穫前の稲が湿気(しっけ)て食べる米に困る私達のことなんて お天道様はお構いなし。 生きていくだけで精一杯なこの時代。 山で拾い集めておいた小枝をストーブにくべて火を起こした。 燃え上がる炎からの温かい熱は嬉しいけれど、 一歩間違えると一酸化炭素中毒や火事で命を危険に晒してしまう。 火の取り扱いには細心の注意がいる。 お父さんが建てた家はあちこち隙間だらけだから、 一酸化炭素中毒では死ねそうにはないけどね。 農家の朝は早い。 お父さんはとっくに布団を抜け出して、仕事に出てしまっていた。 私は一人で、昨夜焼いておいた魚をおかずにかゆを食べて学校に向かう。
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