204人が本棚に入れています
本棚に追加
教室に戻ると冷たい視線が一斉に私を見詰めた。
先生は呆れると怒りとが混ざったような口調で怒鳴りつけてきた。
「波戸崎!!おまえ、どこにまで小便に行ってたんだ?!」
そんなに大声で言わなくても良いだろうに。
先生は本当に気が短くて、だから奥さんにも鬱陶しがられているんだろう。
席についてからも先生の八つ当たりのような罵声が何度も飛んできた。
母親のいない私になら、
何を言っても言い返されることがないと、舐められているんだろうか?
「その目が生意気なんだよ!」とチョークが飛んできて、ギリギリ頬を掠めた。
それが後ろの生徒に当たると、避けた私が責められるのだから理不尽だ。
堪ったものじゃないけど、これが私の日常。
皆はどういうわけか、物心ついた頃から私のことをまるで人間扱いしてくれなかった。
かけっこで一番になっても、書道で入賞しても、褒める人なんかいやしない。
口を開けば耳を塞がれ、目を合わせれば思い切り反らされる。
肩でもぶつかろうものならば、
汚いものを叩き落とすように払われ、思い切り舌打ちされた。
理由もなくそこまで嫌悪される謂れなんか知らない。
だけど、どの態度からも明らかな憎悪と悪意が込められていることを
私はちゃんと感じていたんだ。
最初のコメントを投稿しよう!