1 狐とお揚げ

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「ロイちゃん大丈夫ですぅ?」 「…………は?」  意識が半分飛びかけていたところに突然声をかけられ、アタシはビクッと体を震わせた。  ロイって…………もしかしてアタシのことか?  首を巡らせれば、同級生の松倉麗(マツクラウララ)がじっとこちらを見つめている。  寮で隣室にあたる彼女は、なんとなく真っ白な兎を連想させる子だ。 「ロイちゃん来たばっかりですもの、びっくりしたでしょぅ?  ララはもう見慣れちゃいましたけどぉ」  中学校の卒業と同時、3月中に入寮していた麗は、かなり適応力が高いタイプらしい。  とはいえ、到着と同時にまとわりつかれて早5日。正直ちょっとうざったい。  アタシ、よく耐えてるよホント。  友達はいてもイイけれど、四六時中他人と連んでいられる質じゃない。アタシ、ぼっち気質だし。  ましてや社交的な麗にはすでに友達が多くて、正直あまり関わりたくない。  この子、なんでアタシなんかにくっついてくるのか、本気で理解不能なんだけど。  …………というか、これっておい。 「見慣れるとかいうレベルの問題かよ…………」  なんで平然としてられるわけ?  コスプレ標準装備とか、本気で嫌なんだけど。  ボソッと言えば、向いの席の小動物が真剣な表情で小首を傾げた。 「ですよぉ?  だってララ、油揚げって好きじゃないですしぃ。ケンカするほど仲が良いって言いますもんね」 「………………何の話し?  てか、あんたのそのカチューシャは何なわけ? 熊? 似合ってるけど、ご飯時にケモ耳とかって痛いっしょ」  この子、本物のお馬鹿なのかも。  いまだに先輩達のギャーギャー言う声は聞こえてくるけれど、アタシは今度、目の前でオムライスを幸せそうにつつく麗の格好が気になってしかたなかった。
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