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ウェーブのかかったボブの髪の毛の隙間から、茶色くて丸い飾りが2つはっきりと主張している。
たまにピクピク動いているように見えるあたり、今時のアクセサリーは恐ろしい。
さっきまでは見かけなかった物体だから、食事用のカチューシャなのかもしれないけれど…………その設定、おかしくないか。
やっぱり痛い子なのだろう。
「えっ!? うっそぉ!! 耳出てます!?」
「無意識とか、本気でヤバいから」
「やーん恥ずかしいぃっ!!」
慌ててケモ耳を手で隠そうとする麗にげんなりする。
外せばいいのに。てか、髪を束ねたいならカチューシャとかじゃなく素直にゴムにしろ、マジで。
何やらブツブツと、
「大丈夫大丈夫大丈夫、ララは大丈夫。平常心へーいじょーうーしんっ。落ち着いて……いないいないたぬきはいない、人間人間人間人間人間人間っ」
俯いて独り言を言っているのが聞こえてくる。
ヤバいよね…………?
「なんなのこの学校。変人しかいないのかよ……」
思わず漏れた呟きに麗の動きが止まった。
あ。
しまった。アタシ、またやらかした…………?
これだから他人と居るのは面倒くさい。
「…………怒った?」
始まったばかりの高校生活、できるだけ平穏にいきたいのに……。
感情なんてものは、自分のものですら持て余すのだ。他人の感情なんて、察しろという方がムチャだと思う。
なのにアタシは周りから、思いやりのない自己中心的な人間として敬遠される。
いったい、みんなにはどんな世界が見えているというのか。
空気なんて、無色透明過ぎてアタシには読めない。
真似してみようと、努力した。
一人でいることに、慣れようともした。
アタシごときのプライドなんて、邪魔にしかならない。なのに…………捨てきれなかった。
この世界は息苦しくて、アタシは他人との会話を最小限にしようと思った。
それしか逃れる術がなかったから。
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