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「ちょ、ちょ、ちょ、今の…聞いて……?
いいや、何でもない、ちょ、肩がこ、凝り固まってきたなあ……」
狼狽えつつ、鷲掴みにしていた手を咄嗟に肩へとやって、揉んでみる。
安岡さんは何の反応も見せず、玄関のドアにへばりついて青い顔をしている。
「どうするよー? やばいよ……」
「はぁ? どうしたの? 忘れ物?」
気まずさを振り払って声をかけると、彼は一言「見つかった……」と呟いた。
「はぁ? なにが?」
私が再度口を開くのと、ほぼ同時にドアがノックされた。
「三郎? 開けて。三郎、そこにいるんでしょ?」
女性の声だ。
私がドアに近づくと、安岡さんは首を振っている。
「何? 昔の関係?」
今度は小声で尋ねた。
「由衣だよ、ゆ、い」
安岡さんから名前を聞かされて、私も慌てた。
由衣とは、小池由衣さんのことだ!
私の職場、区役所の『子ども支援課』での子供相談窓口【こどもSOS】に、虐待しているかもしれない、と匿名で連絡が入り、児童相談所の職員と家庭訪問したのをきっかけに親しくなった、小池由衣さんだ。
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