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以前経験した『安岡さんの見取りの世界』の時と同じ感覚に襲われた。
急に気分が悪くなって、目が回る。立っていられなくて、うずくまり目を瞑った。
あぁ。もしかして……、どうしよう……。
思考がどんどん曖昧になる。グルグル回りながら暗い穴の中に落ちていくような……、
――あの時の感覚だ。
**
どのくらいの時間が過ぎたのかはっきりしないけど、少しずつグルグルは収まり、うっすら目を開けることができた。
それと同時に『あぁ。やっぱり……』と絶望的な気持ちになる。
だって目を開けた場所は、白で統一された殺風景な部屋の中だった、から。
さっきの納戸の中の部屋とは、明らかに違う。
窓の向こうには雑木林が見えるし、曇りがちな空まである。
目線が少し高い位置にあるから、もしかしたら2階か、あるいはもっと上か。
改めて見渡すと、目の前には白いシーツが張られた簡素なベッドが置いてあり、その横にはキャビネット型の白い小さな棚と、緑色のビニール製のドーナツ型・丸椅子がひとつ。
窓には水色のカーテンがかけられているけど、今は端に寄せられている。
腰丈くらいの窓から風が吹きこんでいるのか、そのカーテンの端がヒラヒラと緩く揺れていた。
それでも私には風は感じられない。
やっぱり……。
再度、そう思った。
ここは、見取りの世界だ……。
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