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ふたりで向かい合い、無言でイチゴどら焼きを口にする。
イチゴの香りがほわぁんと口に広がる。けれど……、思ったより美味しくない。
「あのさ……」
それだけ言って、安岡さんはイチゴどら焼きの袋をくるっと丸めると、ゴミ箱へ投げ入れた。
ゴミ箱は私の後ろにあるから、私はその放物線を途中まで目で追って、あとは耳で『外した』ことがわかった。
半目で安岡さんを睨むと、気まずそうな顔をしている。
どうにも、カッコがつかない人なんだよなぁ~。
脇に落ちている丸まった袋を拾い、ゴミ箱に放り投げてから、再度軽く睨むと
「ども……」
チラっとこっちを見ながら、新しいイチゴどら焼きに手を伸ばしている。
「ストーップッ!」
思わず声を上げて、その手をピシッと叩いた。
「いでっ!」
「一人、一個ですからね!」
私がピシャリと言うと、安岡さんは子供みたいに口を尖らせた。
「――あのさ。見取りの相手のこと……、聞いてもいい?」
そして手をさすりながら、決まりが悪そうというか……、困った顔をして問う。
丁度いい。私も話さなきゃいけないって思っていた。
本来見取りは安岡さんの仕事なのに、どうして私がすることになったのか。
納戸が何を考えているのか、訊きたかった。
食べかけのイチゴどら焼きを袋に戻して脇に置き、心を落ち着かせて最初から説明した。
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