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「安岡さん」
「ん?」
声をかけると、安岡さんは紅茶をカップに注ぎながら、こちらに目を向ける。
「安岡さんはいつもあんな風に、見取っているのでしょう? ――つらくないの?」
彼は私の質問にはすぐには答えず、手にしたカップをテーブルの上に置いて向かいに腰を下ろすと、落ち着いた瞳で私を見つめた。
「あのさ。俺は思うんだけどさ。
生き物って生まれた時から死ぬことが決まっているよな。
生存時間の個体差はあるけど、死ぬことは決まりだろ?
その最期に立ち会うってことはさ、結構すごいことなんじゃないか、って思わない?
あ、俺も最初は、辛くてさ……、逃げ出したことがあったって、話しことあっただろ?」
私は頷いた。
以前安岡さんの見取りを見た時、そんな話をした。
自分の無力さに絶望した、って。
今日の私みたいに。
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