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「だけど、立花さんや青木さんと出会ってさ、強く思ったんだよ。
俺の最期は、ふたりに見取ってもらいてぇなぁ。
何してくれ、とかじゃなくて。ただ傍にいて欲しい、なんて思っちゃってさ。
確かに『見取り』は楽しい仕事じゃない。けどさ、誰かが傍にいるって、安心するだろう?
俺みたいなごっつい野郎じゃなくて、若くて可愛い女の子の方がいいだろうなぁ、と思わなくもないけどな。……ははは」
安岡さんがあまりにも優しく笑うから、つられて一緒に笑った。
「じゃあ、あのお婆ちゃんも安心してくれた?」
「あぁ。俺はそう思うよ」
安岡さんに頷いてもらって、紅茶を飲んだときよりもずっと胸の中が温かくなった。
私は横に置いておいたイチゴどら焼きを袋から取りだして、一口食べた。
不思議だ。
こんなにも美味しいだなんて……。
ふと視線を感じて前を見ると、安岡さんがモノ欲しそうな顔で私を、いや、イチゴどら焼きを見ている。
「なに? そんなに食べたいの?」
声をかけると、黙って頷いて「さっきはあんまり味わえなかった」なんて言う。
「もう、仕方ないなぁ~」
私は一口サイズにちぎって、安岡さんに向けた。
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