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「あ! 誤解しないで。安岡さんを好きだから、というわけじゃなくて。
あっ! 好きだけど……。安岡さんは大事な人だから……」
めぐみさんが赤くなって言い訳している。
最初の頃あんなに苦手だった安岡さんを、今は大事に思っている。
めぐみさんの気持ちの変化は、とても微笑ましく嬉しく感じた。
「うん、わかるよ。わたしもだもん」
私が頷くと、めぐみさんは泣きだしそうな顔をした。
「こんな生活、長くは続かないって、いつも覚悟しているの。
明日にはきっと破たんしてしまうだろうって、……いつも。
だけど、一日でも長くこの生活を続けたい。だから……」
そう言って、俯いて
「じゃま、されたくない……」
小さく漏らした。
「うん、わかる。大丈夫だよ」
「勝手ですよね、わたし……」
震える声でそう言って、片手で目元を擦っている。
めぐみさんは脆い。
いつも何かに不安がっている。
生きること、生活すること、人から見られること。
そして私たちと一緒にいること。
彼女が今までどんな風に生きてきたのか、私は知らない。
子供の頃、母親に捨てられた彼女がその後どんな風に生きて、何がきっかけで人格解離・DIDを発症したのか、知らない。
ただ、別人格のアレンが言うには、父親から虐待を受けていた、と。
そして夫からも……
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