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ピンポーン
雄大君を保育園から受け取り、一緒に小池さんの家に帰ってきた。
ガチャと、鍵を開ける音が聞こえて顔を覗かせたのは……、めぐみさん!?
「よっ。おかえり」
じゃなくて、アレンだった。
「どうしたの? アパートに戻ったんだよね?」
言いながら靴を脱ぎ、飛び散らかされた雄大君の靴をそろえて、リビングへ向かう。
「おい、雄大。手、洗うのと、うがいして来い」
アレンが雄大君のリュックを受け取り、背中を押している。
「ちょ、ちょ、アレン!もう少し優しく! 子供は大人の言葉使いを真似するんだから!」
私は慌ててそう言って、雄大君についていった。
雄大君はいつものルーティーンのように手を洗い、うがいをこなしている。
水を出しっぱなしにしたまま、コップを掴んだり離したり。はたまた踏み台から下りたり、また上がったり……と、忙しそうなところは少し気になったけど、すごく成長していると感じた。
きっと日頃のトレーニングの成果と、なにより小池さんが根気よく見守っているんだと思う。
口元をタオルで拭い終わったタイミングで
「雄大君、えらいね!」と言って頭を撫でると、チラッと私を見て少しだけ笑ってくれた。
そして、リビングへと走っていってしまった。
「ちょ、ちょ、走ったら危ないからっ!」
急いで手洗いうがいをすませて私もリビングへ行くと、雄大君はアレンの腰に手を回してアレンの周りをグルグル回っていた。
「なに? ずいぶん仲良くなったんだね」
嫌な顔をしているアレンがおかしくて、私は少し噴き出した。
アレンは仏頂面で、止まれ、とか、目が回るだろー、とか言いながら何の抵抗もしない。
終いには、
「も~、俺には無理だ。だいたい俺は子供は苦手なんだ!」そう言って床に座りこんだ。
「ねえねえ、ねえねえ、ねえねえ……」
すると今度は、座っているアレンの周りを回っている。
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