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「美味しいです。小池さん」
「ホントに手抜き料理なんだけどね」
小池さんは少し恥ずかしそうにして、お粥を口に運んだ。
雄大君が食べ終わる頃には、私と小池さんも食べ終わった。
テーブルの上のものを台所に片し、冷凍庫から小さなカップアイスを出す。
保育園の帰りに寄ったお菓子やさんで見つけたデザートだ。
「雄大君、美味しいね」
はなちゃんは雄大君の顔を覗き込んで、にまぁ~と幸せそうに笑っている。
女の子は甘いものが大好きなんだ。
それに、こうして4人で食べている時間が楽しい。甘いバニラの味だけじゃない特別な美味しさが、この中にはあるんだろうと思う。
「こういう賑やかなのもいいわね。
雄大と向き合ってアイスを食べるなんて、初めてかもしれない……」
小池さんはアイスを口に含ませながら、ポツリと漏らした。
「大概は、食べている間にこれやっちゃおうとか。テレビを見させておいて、その間にあれ片付けようとか……。
一緒に何かをする余裕なんてないのよ。
いつも時間に追われているから……」
「それは仕方ないですよ。だって小池さんは仕事もして、家の事もやって、その上子育てもだし……」
「雄大、すごく楽しそう。なんだか、すっかり青木さんに懐いちゃったなぁ」
目の前のふたりは、そろそろアイスが食べ終わり、名残おしそうにスプーンを舐めている。
やがて「ごちそうさまー」と、はなちゃんが言うと、雄大君も「ごちそうさまー」と繰り返した。
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