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「前に、雄大の父親のこと話したことがあったよね?
駆け出しの政治家だったんだけど、身分が違いすぎるから一緒になれない、って。
時代遅れもいいとこなんだけど、それが現実なんだよね。
その男と別れてすぐ三郎をひろって。で、またすぐに妊娠しているってわかって……」
私が神妙な顔で頷いたからか、小池さんはフォローのつもりか、早口で言い足した。
「三郎をひろった、って言っても道に落ちていたわけじゃないのよ。
当時、私が働いていたバーの厨房に三郎がいて、ちょっと話すようになってね。
どこ住んでるの? って聞いたら、バーの倉庫の中とか言うから『じゃあ、うちにいらっしゃいよ』って誘ったの。その代わり、家の事やってね、って」
「安岡さん、定職があったんですか?」
「定職? あぁ、皿洗いだったけど……、まぁ定職といえば、定職だったわね……」
苦笑いを浮かべる小池さんの顔をしげしげ眺めてしまった。
安岡さんはどうして辞めてしまったんだろう……。
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