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こんな状態だったから、夕方安岡さんとめぐみさんが一緒に帰って来た時も、うまく言葉を交わすことができなかった。
「ちょうど駅でバッタリ会ってさぁ。
なぁ、今日はもう飯つくるの面倒だから、なんか食いに行かねぇ?
給料もらったしさ」
にんまり笑いながら話す安岡さんの話を、テレビでも見ているみたいにぼんやり聴いていた。
『どうした? 何か、あったか?』
だから、心配そうに私の顔を覗きこんでくる顔が目の前に現れた時、驚いた勢いで弾かれたように、空気もへったくれもなく、いきなり質問した。
「あ、あのさ。安岡さんは小池さんのこと今でも好きなの?
もしかして、本当は小池さんと暮らしたい?
小池さんと雄大君と家族になりたいって……、私達に遠慮して言えないけど、本当は……」
「ちょちょ、どうしたの? いきなりなに?
由衣と何かあったのか?
あいつから、なに聞いたんだ?」
安岡さんは目を白黒させて、動揺していた。
「やっぱり、図星なんだ。
それなら、そう言ってもいいんだよ。
私には安岡さんの幸せを邪魔する権利なんて……、あ、ちがうか……。
私、いつも安岡さんに甘えてるもんね。
こんな私じゃ『出ていきたい』なんて、言えないか……、ごめん」
自分で言っておいて、情けなくて涙が出そう。
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