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私は引き寄せられるように安岡さんの後に続いた。
昼からずっとグルグルと渦巻いていたストレスから、解放されたい一心だったかもしれない。
――ううん、そうじゃない……。
安心させて欲しいんだ。
安岡さんはここにいる。出ていかない。って、ちゃんと言って欲しかった。
納戸の廊下に足を踏み込む直前、自分の本音に気がついて足を止めた。
いいのかな。こんな邪な気持ちで安岡さんの話を聞いて。
安心したいがために、まるで気持ちを試すようなことを言ったんだ、私……。
「ほら、立花さん」
安岡さんは、入り口で突っ立ている私の手首を掴んだ。
「大丈夫だよ、部屋に誘いこんで、取って食うわけじゃないからさ」
「えっ?」
私の戸惑いを全く違う理由に解釈したらしく、爽やかな笑顔を浮かべている。
「わ、わかってるわよ、そんなの……」
口ごもる私にさらに追いうちをかける。
「ほら、俺の好みはそもそも、ボン、キュッ、」
「シャラーーップッ!! それ以上言ったら殴るわよっ!」
私は安岡さんに掴まれている手首を振りほどいて、安岡さんを追い抜いた。
「早く、ドアを開けてよ! こうなったら聞かせてもらおうじゃないの!」
ったく、もう! この人はいつだって一言多いんだ!!
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