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「私の部屋と作りは同じなんですね」
安岡さんの部屋に足を踏み入れると、後ろからめぐみさんの声がした。
わーっ! めぐみさんがいること忘れてた!
「そ、そっか、めぐみさん、安岡さんの部屋、初めてかぁー」
めぐみさんの登場によって、ぐつぐつ煮込んでドロドロになった頭に、冷水をぶっかけられたみたいにシャキーンとした。
やっと落ち着きを取り戻した気がする。
一枚しかない座布団をめぐみさんに譲り、並んで床に座った。
安岡さんは、私達の前で胡坐を組んでいる。
「えーと、コホン。
で? 聞かせてくれるんだよね?
ずばり、小池さんとやり直したい、というお気持ちは? どうなんですか?」
私はマイクよろしく拳を口元にあて、記者会見をするタレントを糾弾する記者の心意気で質問した。
「小池さんに言った『父親になろうか発言』ですが……、あれはプロポーズだったんですよね? 今でもその意志はあるんですか?」
更に追いうちをかけて、マイクの拳を目の前につきつける。
「はは、いやぁ、照れるなぁ~」
安岡さんは後ろ頭に手を添えて、気取ったポーズを取った。
なに、ソレ。全然面白くない……。
私が無言で横のめぐみさんを見ると、めぐみさんもしらーっと、白い目で安岡さんを見ていた。
わっ。めぐみさん、怒ってる?
「つまんないリアクションはいいから、早く答えてよ」
ファローのつもりで言ったんだけど……。
「あんたら、ほんっと、エスだな……」
安岡さんが恨めしい顔になって呟いた。
あら、失礼しちゃうわね。
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