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「だから、ほら!
由衣のところに転がりこんでたわけだから、俺行くとこなかったし……。
あいつが子供の父親に未練たらたらなのは、知ってたしさ。
いつだったか、『子供ができた』って連絡しているのを聞いちゃってさぁ。
これはもう男が迎えに来るだろうな、って思ってたし……、そうじゃなくても、子供に手がかかる時期過ぎたら追い出されんだろうなぁ、と思ってたからさ……」
「ん……、それは……」
結果、その通りになったわけだよね……。
私が言葉に詰まると、安岡さんは「そういうわけなんだよ……」と言いながら頷いていた。
「あ、でもさっきの『ちょっと理由があって結婚できない』ってどういうこと?」
「うーん。それ言わなきゃだめか?」
私が新たな疑問を突きつけると、安岡さんは眉間の皺を深くして、心底言いにくそうにしている。
「言いたくない?」
「言いたくない、っていうか……、俺、ちょっと……事情がさ……」
事情!? 結婚できない事情!?
「それって……。やっぱり……、安岡さん! あ、あ、あ、んた!!」
私は安岡さんの眉間に人差し指を突きつけた。
もしかしたら……、とよぎっては打ち消していた、もう一つの理由……。
「え? なに? ちょ、怖いんだけど!? 指が目に刺さる! 刺さるからっ!」
安岡さんは手の平で目をカバーしながら、腰をずらして後ろに下がった。
だいたいおかしい、おかしい、と思ってたのよ!
ずっと、もやもやしてた。
安岡さん、あなた……!
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