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「本当は、既婚者なの!?」
私が声を張り上げると、安岡さんは「キコンシャ?」と言って首を傾げた。
「とぼけるんじゃないわよっ!
もう奥さんがいるんじゃないの、って言ってるの!
例えば……、借金こさえて、奥さん置いて逃げてきたとか……、いや、それだけじゃないわ!
――父親やりたかった、だなんて……」
私は安岡さんの胸倉を掴んだ。
「白状しなさい! 妊娠中の奥さん、どこ置いてきたの!? この裏切りものっ!」
「た、た、た、ちばなさ、ん……、く、くるしい。ロープ、ロープ」
首元をぎゅうぎゅう絞めつけている手の甲をぺチぺチ叩いている。
「おい、おい、歩生、落ち着けって」
いつの間にチェンジしたんだか、アレンが私の手首を握った。
「絞めるときはな、そんなんじゃダメだ。大動脈付近を握ってだな……」
「ば、ばか、やめろ、アレン!」
安岡さんは両手を前に出して、私達に抵抗しようと試みたけど、4本の腕に絞められて白目になった。
「きゃ、大丈夫?」
流石にやばいと思って、私は手を離したけど時遅し……、安岡さんはぐったりして目を瞑っている。
「アレン~」
すぐ隣で悪い顔で笑っている人物を睨むと
「俺、悪くねぇよ。歩生の手助けしただけだもんなぁ。
まあ、大丈夫じゃね? 息してるし」
言いながら、安岡さんの顔に手の平をかざして笑った。
もぉ~……。
とはいえ、元はと言えば、私が悪いんだけど……。
「ちょっと、安岡さん見てて」
アレンにお願いして、私は濡れタオルを作るべく、洗面所に向かった。
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