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「で? そもそも、どうして安岡の首絞めてたんだ?
歩生、ついに安岡に押し倒され…、ぶっ、つめてっ!」
変なことを口走るアレンの口に向かって、濡らしたタオルを投げつけた。
「そんなんじゃないよっ!」
「違うのかよー、つまんねぇ~」
ニヤニヤするアレンから回収したタオルを安岡さんの額にあてながら、私は今までのことをざっと説明した。
「安岡さんの事情はともかく、小池さんはその政治家のことが好きだったから、結婚までは踏みきれなかったみたいなんだ。
で、そこに追い打ちをかけるように『認知したい』と連絡が来て、別れることになったんだって」
「めでたしめでたし、じゃねぇか」
「うーん……。それがさ……」
なのに、後日その男性のもとに行くと、男性はすでにどこかの令嬢と結婚していたという。
『言ってみれば、保険のつもりだったみたい。
奥さんが子供のできない体質だったらしくてね。
結婚はできないけれど、父親として君も子供も大事にする……、って言われてね。
――認知させたわよ。雄大の将来を考えたら、その方がいいと思ったし……』
けれどそれからわずか2年後、奥さんに子供ができたそうだ。
『あっちの弁護士がやってきて、金と引き換えに今度は『一切関係ありません。全ての権利を放棄します』っていう書類出されて、ペン渡されて……。
――まあこっちだって、まとまった金が手に入ったわけだから、いいんだけどね……』
すっきりしたわよ。と、小池さんはカラカラ笑っていたけれど……、本当はそんな簡単なものじゃなかったと思う。
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