25人が本棚に入れています
本棚に追加
「アレン……、今度は奥さんと子供が訪ねて来たらどうしよう。
奥さんと一緒に帰れって、言ってあげらんない……」
「ぐはっ。出たな、歩生の斜め上いく妄想癖。ついに安岡、コブつきか。
お前の頭の中、どうなってんだ?」
アレンは我慢ができないという顔をして、噴き出した。
「だって! 一緒に住んでる人と結婚できない事情、っていったら……」
「俺たちとだって住んでるじゃん、安岡。
あのな、男女なんてもんはさ、一緒に住んだら、はい結婚、とか。そんな簡単なもんじゃねぇだろう?」
「そうかもだけど……」
私の経験値じゃ、説得力のある言葉は生まれない。
けど、少なくとも小池さんと安岡さんの間には、きっとなんらかの特別な気持ちがあったんじゃないか、と思う。
だって、シェアハウス同然の関係だけど、こうして生まれてくる気持ちがあるんだもの。
離れたくない、というか……、傍にいて欲しい、というか……。
「歩生」
「ん?」
顔を上げると、アレンはまっすぐ私を見ていた。
初めてこの瞳を見た時、どうして何も映していない冷たい無色だと思ったのだろう。
アレンの瞳はいつだって多くを語っているのに。
「俺たちは? 俺たちがいなくなったら嫌か?」
ほら、こんなふうに……、少し不安そうに揺れている。
私は隣に座り、胡坐を組んだ膝の上でだらりと暇そうにしている手を取った。
「うんヤダ。ずっと一緒に暮らしていたい」
「でもさ、お前こそ、結婚とかどうするんだよ?
俺は男はキモイだけだし、安岡は結婚は無理なんだろう?
けどさ歩生、お前は違うじゃん。
お前はまだ若いし、これから男だってできるだろうし……」
「はあ?」
アレンがそんなことを考えていたなんて、初めて知った。
最初のコメントを投稿しよう!