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「はぁー! ごちそうさん!」
アレンはスープまで全部飲んで、ラーメンどんぶりに向かって手を合わせた。
「はい。どうも。お粗末さま……」
私はレンゲでスープを飲みながら、やや不満顔。
「なんだよ、歩生、不満そうだな。うまかったぞ」
「じゃなくて……」
「お前が、割ったんだろう。あの卵は俺がもらうべくものだからな」
「じゃなくて!!」
最後の卵だったから正直悔しいけど、今はそんなことを議論するつもりはない!
「アレンがあんなこと言うからでしょ!」
「あんなこと?」
アレンはすっとぼけた顔して、にやりと笑ってから「あぁ~」とわざとらしく声をあげた。
「お前と安岡の結婚な」
「決まったみたいな言い方しないで!」
ったく。急にとんでもないこと言うから、焦って卵を握りしめちゃったじゃない!
「別にいいじゃん。現に今、こうして安岡と同棲しているわけだし……」
「同居ですっ! しかも納戸だし! もう、わざと変な言い方してるでしょ!」
私は勢いよくスープを飲み干して、二人分のどんぶりを重ねるとそれを流しへと運んだ。
それから冷蔵庫から麦茶を取りだし、勢いよくコップに注いだ。
「あ、おれも」
アレンの空になっているコップにも継ぎたしてから冷蔵庫にしまうと、心を落ち着けて座り直した。
「あのさ、結婚なんてそう簡単にできないって、さっきアレンが言ったばっかじゃん。
それに、そもそも安岡さんは結婚したくない人なんだから!」
確かに傍から見たら、私達のこの共同生活は『結婚していない男女が一緒に暮らしているなんて』と避難される形なのかもしれない。けど私にとっては、自然な形だと思っている。
結婚って、そんなに大事なことなの?
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