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「あぁ?」
「戸籍がない?」
アレンと私が同時に声をあげた。
私は今の【子ども支援課】で働く前は、違う区の【戸籍課】に在籍していた。
だから戸籍がない人の事情はわかっているつもりだ。
多くの人は、いわゆる『300日ルール』にひっかかったケースだ。
『300日ルール』
民法772条「離婚後300日以内に生まれた子供は民法上元夫の子供と推定される」というもの。
離婚調停中だったとか、別居中でしたとか、そういう言い分けは一切通じず。
『再婚しました。早産で300日以内に生まれちゃいました』も、認めてもらえない。
だから多くの女性は、元夫の戸籍に子供を入れたくなくて、出生届けを出さない。
その結果、『無戸籍』の子供が誕生してしまうというもの。
2007年以降に生まれた子供に関しては『離婚後の妊娠である』という医師の証明書があれば、現夫の戸籍に出生届けを出せるようになったはずだけど……。
安岡さんの年だと……、そんな救済処置はなかった時代だ。
つまり安岡さんは、32年間戸籍のない人生を送ってきた、ということだ。
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