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「美味しい~。本当に美味しい」
「それは良かった」
目の間にはホカホカのホットケーキ。
私の好み通り、ハチミツ味の生地の上にホイップクリームが乗っている。クリームの上にはイチゴ。
買った覚えはないから、安岡さんが買ってくれたんだ。
私は半分ほど食べて紅茶に口を付けると、安岡さんは空になったお皿を前に、紅茶を飲みほしていた。
「あのさ、昨日は……」
「ちょっと待って。あのさ、聞いて欲しいんだけどさ」
私がおずおずと話し始める声を遮り、安岡さんは口を開いた。
「立花さんは役所の人だから……、あー、言っとくけど、俺の無戸籍は役所とは関係ないからな、わかった? これは確認しとかないと、次の話できないからな」
私が神妙に頷くと、安岡さんは安心したように小さく笑った。
「じゃあ、次の話な。就籍のことだけど、立花さんは就籍できないか、って考えてると思う。ちがうか?」
「もちろん、考えてるよ。無戸籍を失くす運動をしている弁護士会だってあるし、NPO団体もあるしね。調べればきっと就籍の手続きをとる方法があると思う」
当然、手続きは大変だと思うけど、安岡さんは日本で生まれてるわけだし、戸籍を得ることは当然の権利なんだから。
「確か、法務省で調べれば……」
「うん、それ、なしの方向で頼むわ」
「えっ?」
安岡さんが私の言葉を遮り、申し訳なさそうに少しだけ頭を下げた。
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