雪降る夜に

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「お昼休みに食堂で耳にしたんですけど、谷さん、仕事の方が大変みたいです。お薬の説明もうまく出来ないみたいで、今日はイライラして患者さんを怒鳴りつけたそうです」 「……そうなのね、多分そんなことになるとは思ってたの。わかったわ、有紀ちゃん、教えてくれてありがとう。明日からはなんとしても病院は休ませるわ」 ガックリと肩を落としたお母様が、なんだか随分と老け込んで見えた。 「ご実家で療養されていたんですか? 円山のマンションではなくて」 「……修二は今、麗奈さんとは別居中なの」 そう言ってお母様はサングラスをそっと外した。 「…………!!」 お母様の目の縁が赤黒く変色していた。 まさか、、そんな、まさか、谷さんが! 「そ、それって、まさか谷さんが? 修二さんが?」 あまりの衝撃に呆然と立ちすくむ。 「修二すっかり人格が変わってしまって、手がつけられない状態なの。家の中はもうメチャメチャよ。今、麗奈さんはどこかの賃貸マンションを借りて暮らしているわ。もういずれは離婚ね。修二のことをそれはもう恐ろしがっていて、、仕事も無理なことはわかってはいたの。でも、私と主人の力では止められなくて」 憔悴しきったようすで話すお母様に、かける言葉はみつからなかった。
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