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「あれ? 有紀ちゃんじゃないか」
薬局から出て来た谷さんが優しく微笑んだ。
いま聞いた話が全くの嘘のように、穏やかな笑顔を見せて立っていた。
「谷さん、お、お疲れ様でした。今、ロビーでお母様をお見かけしたので、ご挨拶してたの」
「そうか、じゃあ、有紀ちゃんもついでに送って貰えばいいよ」
「い、いえ、大丈夫です。アパートは駅から近いので」
本当は遠いけれど、、、。
「有紀ちゃん、たまには一緒に夕ご飯でもどう?」
お母様から懇願するような目で見つめられ、戸惑う。
「……で、でも、、」
「そうだな、有紀ちゃんがいたら楽しいな。ねぇ、来てよ。たまにはいいだろう?」
私の前では猫を被っているのだろうか?
終始ニコニコしている谷さんからは、とても想像出来ないのだけれど。
この目で確かめてみたい気持ちと、関わりたくない恐怖で心が揺れた。
谷さんを全力でサポートするのではなかったか。そうだった、逃げてはいけないんだ。
「じゃあ、お邪魔させていただきます」
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