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彩矢ちゃんの顔がパッと輝いた。
「……いいの? 迷惑じゃない?」
「俺、何もしてあげられないから。毎日でも遊んであげたいけど、出来ないし……。心配したり、忘れないでいてあげることくらいしかしてやれないから。ごめん……」
「あ、ありがとう。悠李のこと大切に思ってくれる人がいるだけですごく嬉しいの。それだけでいいの」
彩矢ちゃんがそう言って、潤んだ目で俺を見つめた。
視線のやり場に困って、上着のポケットからスマホを取り出す。
二人でスマホを取り出してQRコードをかざしていたら、いつの間にか悠李がジムから下りていた。
「ママ、なにしてるの?」
「あ、悠李もう帰るよ。おじさんに遊んでくれてありがとうって言いなさい」
「おじちゃん、ありがとう!」
「う、うん、おじちゃんも楽しかったよ、またな」
「あ、佐野さん、また配達お願いしてもいい?」
「う、うん。かまわないよ、それは仕事だから……」
「ありがとう。じゃあ、また」
彩矢ちゃんは悠李の手をつなぎ、ベビーカーを押して帰って行った。
時計を見ると、12時40分を過ぎていた。慌てて車に戻り、弁当も食べずに次の配達場所へ向かった。
一体これから、どんな風に付き合っていけばいいのか、全くわからない。
彩矢ちゃんの考えがよくわからない不安と、悠李への愛着がどんどん湧いていきそうで、自分にさえも自信がなくなってきた。
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