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「や、やめてよね~ 人妻口説くの。その言葉に騙されてばっかり」
「ふははっ、僕も有紀ちゃんには、かなり騙された方だと思うけどね」
谷さんからの思わぬ反撃に言い返すことができずにうつむく。
「……騙されてよかったでしょ。あんな素敵な人と結婚できるんだから。麗奈さんのウェディング楽しみね。きっと、びっくりするくらい綺麗なんだろうな。本当に素敵な人だもの。谷さんにお似合いだよ。お母様が選んだ人ですもんね」
少し動揺しながら早口で褒めた。
「あ~あ、面倒くさいなぁ、結婚式って。有紀ちゃんと駆け落ちでもしたいなぁ」
「や、やめてったら、そんなこと言うの!」
ムキになって怒鳴ってしまったことが恥ずかしくて、慌ててトレイを持って席を立った。
「ご、ごめん、有紀ちゃん」
谷さんが驚いた様子でわたしを見つめた。
「……先に行くね」
引きつって動揺した顔を見られたくなくて、足早に返却口へトレイを下げに行った。
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