百合の花

2/3
前へ
/3ページ
次へ
学校帰り、陽は沈みかけ夜になろうとしていた。 「ねぇ、世界で一番美しい死って、なんだと思う?」 ただぼーっと歩いていたら、隣にいた幼馴染の女にそう問いかけられた。 「私はね、部屋いっぱいに百合の花を敷きつめて、そこで眠る様に死ぬのが世界で一番美しい自殺だと思うの。2番目はオフィーリアの溺死」 問いかけといて語り出したそいつの意図がわからない。 オフィーリアはこの間一緒に見たから分かるけど、なんで百合?白いから?? 「ふふっ、おバカさんだねぇ」 「んだとコラ」 そう返しながら、いつの間にか前を揺れていた女の長い黒髪を睨みつける。 「君は気にしなくていーよ。ただの戯れ言だから」 振り返ったこいつは薄く微笑みながらそう言った。俺は張り付けられた能面みたいなこの顔が好きではない。猫なんか被って、こいつは生き辛くはないのだろうか。 「…けっ、そーかよ」 そう吐き捨てた。 「じゃあね、私、今日は寄るところあるから」 「そーかよ」 またか、と思った。ココ最近はずっとこうである。 「(まあこいつも一応女だし)気ぃ付けろよ」 気にはなるが頭の隅に追いやり、背を向けた。 「…ふふっ、じゃあね、……ばいばい」 「……あ?」 咄嗟に振り返ると、そいつの黒髪がちょうど角を曲がったところだった。 ドクドクと早鐘を打つ心臓と、だんだんと強まる嫌な予感。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加