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学校帰り、陽は沈みかけ夜になろうとしていた。
「ねぇ、世界で一番美しい死って、なんだと思う?」
ただぼーっと歩いていたら、隣にいた幼馴染の女にそう問いかけられた。
「私はね、部屋いっぱいに百合の花を敷きつめて、そこで眠る様に死ぬのが世界で一番美しい自殺だと思うの。2番目はオフィーリアの溺死」
問いかけといて語り出したそいつの意図がわからない。
オフィーリアはこの間一緒に見たから分かるけど、なんで百合?白いから??
「ふふっ、おバカさんだねぇ」
「んだとコラ」
そう返しながら、いつの間にか前を揺れていた女の長い黒髪を睨みつける。
「君は気にしなくていーよ。ただの戯れ言だから」
振り返ったこいつは薄く微笑みながらそう言った。俺は張り付けられた能面みたいなこの顔が好きではない。猫なんか被って、こいつは生き辛くはないのだろうか。
「…けっ、そーかよ」
そう吐き捨てた。
「じゃあね、私、今日は寄るところあるから」
「そーかよ」
またか、と思った。ココ最近はずっとこうである。
「(まあこいつも一応女だし)気ぃ付けろよ」
気にはなるが頭の隅に追いやり、背を向けた。
「…ふふっ、じゃあね、……ばいばい」
「……あ?」
咄嗟に振り返ると、そいつの黒髪がちょうど角を曲がったところだった。
ドクドクと早鐘を打つ心臓と、だんだんと強まる嫌な予感。
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