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第2章 先輩の彼女
あっ、間野さんの温もりが、無くなってしまった。
そんな事考えながら、間野さんの背中を見る。
私の為に、必死にタクシーを見つけようとしてくれる間野さん。
これが、絹花の彼氏じゃなくて、私の彼氏だったら?
私は、世界一幸せな女だったかもしれない。
ふいに間野さんが手を挙げ、タクシーが彼の前に止まった。
残念なくらいに、早く見つかってしまうな。
「斎藤。」
間野さんに呼ばれ、タクシーに乗る。
「自分の家、言えるか?」
私は間野さんを見る。
酔って言えないって言ったら?
間野さんは、一緒にタクシーに乗って、私を家まで送り届けてくれるんですか?
そんな声無き声が、間野さんに届いたようで、彼は下を向いた。
「飲みすぎだ。危なくなったら、絹花に電話しろ。」
そう言って、間野さんはタクシーから、離れた。
ドアが閉まる。
もう、間野さんの顔も見えない。
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