マサトのバレンタイン前日譚

6/8
前へ
/8ページ
次へ
 すると、口内でおかしな甘みと酸味が広がった。 「ぐはぁっ?」  予想外の味に、びっくりして悲鳴が漏れる。口の中のトリュフは、またたく間に溶けていった。  だがそれは決してチョコレートの口どけがよかったからなどという理由ではなく、トリュフの中につまっていたものに原因があった。 「えっとね、ラズベリージャム入れてみたの」  どうどう? と聞いてくる妹に声も出ない。  甘いのか酸っぱいのかわからないこれは、噛めば噛むほど口に広がって大変なことになる。そう思ったマサトはほとんど噛まないまま、それをごっくんと飲みこんだ。 「どうかな?」 「大惨事だよ!」  感想を求める妹に、マサトは涙目でいった。 「比率がおかしいっ。外装のチョコレート溶けた瞬間味がほとんどジャムじゃないか!」  よく作ったな、と、変な感心を抱いてしまった。  せりなはえー、と声を上げる。 「でも中にフルーツジャムっぽいのが入ってるチョコレートお店で見かけるしー」
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加