しっかりナナミとおっちょこちょい森さん

しっかりナナミ

15階へ行く裏口の専用エレベーターに、森部長が社員証のカードをかざしてエレベーターを起動させる。

『ウィン』とエレベーターが起動する音がホールに響き、多分私たち以外誰もいないビルの静けさが、扉が開くまでの時間と比例して長く感じる。

いつ扉が開くかわからないこの静けさの重さが嫌で、森部長へ話しかけようとすると森部長の方から話しかけられた。

「ナナミさんは、優しいですよね」

………

いきなりの誉め言葉に返す言葉がすぐに出ない。

とりあえず「ありがとうございます」と言って森部長の反応を待つ。