しっかりナナミ

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その歩道を数メートル歩くと、森部長が急に立ち止まるので、私も足を止める。 「これ……使って下さい」 森部長が振り返り、自分の首に巻いていたマフラーを外し、私へ差し出してくれた。 「……ありがとうございます」 そのマフラーに手を伸ばした時、つい足を踏み出してしまい、雪を踏んでいた軸足が不安定になり、前に転びそうになる。 「あっ!すいません!」 マフラーを受け取るつもりが、転びそうになった手が前に行き過ぎて、森部長の腕を掴んでしまった。 森部長がもう片方の手で私の体を支えてくれたので転ぶ事はなかったが、差し出してくれたくれたマフラーを雪が積もっている歩道脇に落としてしまった。
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