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如何だろうか?
まさに全国的にこのウワサが広まる少し前、その発信源とされる岐阜(※柳ケ瀬のある岐阜市ではないが…)にいたUさんの話によると、以下の点において一般的に知られている「口裂け女」の話とは異なる点がみられる。
・子供だけでなく、大人も真剣に信じていた。
・男女の区別はなく、性別不詳(呼称も「口裂け人間」、「口の裂けた恐ろしい人間」)
・「わたし、きれい?」などの具体的な言動の情報はなく、ただ「人を脅し、危害を加える」という表現のみ。
・精神科病棟から逃げ出した患者という具体的な過去(※これは全国版でも語られることがある)
・具体的な被害者の情報(勤務先)が知られている。
これが真に最初のオリジナルとまではいえないが、Uさんの暮らしていた時間と場所からして、1979年当時、全国的に広まった「口裂け女」伝説の〝原型〟に近い話であることは確かだろう
(※おそらく起源は一つではなく、もっと遥か昔、江戸や明治の頃に語られていた話のモチーフも合わさって、この「口裂け女」伝説はできたものと思われる。前作参照)。
昨今、ただのウワサまでがなんでもかんでも「都市伝説」と呼ばれてしまっているが、厳密にいうと、
「誰もが本当の話と信じて疑わない」というのが「都市伝説」というカテゴリに入る条件である。
例えば、東日本大震災の際に広まった「被災地に外国人窃盗団が出る」だとか、「有毒成分の含まれた雨が降る」などと言った嘘情報などがまさにそれだ。
逆に言えば、「そんなのただのウワサだろ?」と思われるようになってしまうと、最早、それは「都市伝説」ではないのである。
その点からしても、Uさんの話と全国版の話を比較すると、
大人も信じていたリアルな犯罪者の話 → 子供が好むような超常現象的な妖怪の話
へと変化していった過程が覗い知れる。
「わたし、きれい?」云々の、いかにもテンプレなストーリーが付け加えられたのも、全国版の方が後期の発展型であることを物語っているだろう。
とすれば、無論、都市伝説であるので、その話自体がただの眉唾か、あるいは何かの勘違いだった可能性もいなめないが、もしかすると実際にそんな犯罪者(またはそれに類似の存在)がいて、その目撃談に尾ひれがついていったことも考えられるのである。
我、夢の内にそんなことを思いぬ(鳥山石燕風w)。
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