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私は深呼吸をしてから彼女の右手を掴んだ。
「薙さん?」
「高橋さんと……付き合って欲しくない……」
「えっ?」
「ああ! ごめん! 何言ってんだって、思われるかもしれないけど……」
そこまで告げると、藤村さんは拗ねたように頬を膨らませた。
「もう……やっぱり薙さんは、人誑しです」
「えっ、いや、そんなつもりは……」
「でも……そんなあなたが好きだから……いつか絶対振り向かせてみせますね」
「おっ、お手柔らかに」
自分は本気の恋なんてしないと思っていた。
誰かを愛するなんて、無理だと思っていた。
倫理に反した舞さんとの恋は結局上手くはいかなかったけれど、人生において必要無かった恋なんて、きっとありはしないんだ。
今度の恋は、ハッピーエンドになると期待して……
私は微笑みながら缶コーヒーを飲み干した。
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