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「俺はちゃんと雅のこと、
女として見てるけど」
『は?』と発したのは私じゃ無い。
それよりも先に
芳が問い返したのである。
「それ、どういう意味だよ」
「俺、雅となら付き合える」
その言葉が頭の中をぐるぐる廻る。
…こ、これは非常にマズイ状況だ。
だって、そんな、健介ッ。
>ねえ、雅。
>絶対、内緒にしてね。
>私、健介のことが好きかも…。
入社早々、祐奈は私にそう打ち明けた。
だからその恋を応援しますよと
彼女を励ましたのに。
本人不在の場で、
どうしてそんなことを言い出すのか。
取り敢えず健介の手を根性で引っぺがし、
自分で自分の手を擦りながら私は訊ねる。
「ゆ、祐奈と私だったら、どっちが…。
いや、あの、参考程度の質問だと思って。
具体的に祐奈がどうとかじゃなく、
祐奈は比較対象として出しただけでッ」
しどろもどろなのは自分でも認めよう。
しかし、健介は冷静なままで返答する。
「祐奈には悪いけど、雅かな。
俺、正直、女と付き合うのは面倒なんだ。
でもお前となら大丈夫かなって」
うああ…。
いや、それって絶対に
『好きか嫌いか』の判断基準じゃなくて、
『面倒か面倒じゃないか』だよね??
反論しようとする私を遮って、
何故かヒートアップした芳がこう言った。
「アホか?!
おいこら健介、均衡を崩すなよ。
仲間内でそんなことを言い出されると、
こっちが気を遣うだろ?!」
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