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そしてそのまま立ち上がり、
トイレへと行ってしまう。
私は健介と2人きりになり、
気まずい静寂が訪れた。
サクサクサク…。
もうお腹一杯なのに、
この間をどうにか保たせようと
頑張ってイカの串揚げを食べる私。
ぐにょぐにょぐにょ。
今年はイカが不漁らしいからねー。
きっとこれ、冷凍モノなんだろうなあ。
なんか、噛んでも噛んでも飲み込めない。
きっと私の顔は、
下半分だけ不格好に歪んでいるであろう。
…などと頭の中でいろいろ考えていると、
健介がグラスの水滴をその指に乗せ、
私の方へと飛沫をとばす。
「安心しろ、俺は雅に惚れてないから」
「んごふふ」
サザエさんのエンディングみたいな
声が出てしまったのは、
驚きの余りにイカを飲み込んだからで。
なぜ思わせぶりなことを言ったのかと
責めるように健介を睨みつけると、
彼はシャアシャアとこう答えるのだ。
「お前らを見ているとイライラすんだよ。
だって絶対に雅は芳のことが好きだろ?」
「すっ、好きじゃないよッ」
「バーーカ!
何年観察してると思う?3年だぞ、3年。
さすがにどんな間抜けでも気づくっての。
…あ、ごめん。
雅の大好きな芳君は気付いてないか。
アイツさ、ある意味尊敬に値するよな。
どう考えても両想いじゃん、お前たち」
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