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……
「でもあれ一鉢300円もしないよね?
騙されたわ~、当時の私はウブだったし。
ほんと芳ってそういうとこ上手いからさ」
会社近くの焼鳥屋。
相変わらずいつものメンバー4人で
グダグダと集っている。
「うるさいなあ、何度も同じ話をするな。
ああっ、もうクソ面倒臭い。
女ってなんで記念日に命を懸けるワケ?
チッ、誕生プレゼントに欲しいものを
リストにして送ってきやがった。
舞美のヤツに俺の給料が幾らか
教えてやろうかな」
4人の内訳はこんな感じだ。
全員が26歳の同期組で、
・見るからに平凡な容姿の私こと高橋雅。
・隣席のモデルみたいな美人は中原祐奈。
・祐奈の前の穏やかそうな男が橋口健介。
そして、私の正面でスマホを見つめ、
可愛い彼女から届いたメッセージに
ブツブツ文句を言っているのが井崎芳。
…そう、あの“芳”である。
入社式で何が驚いたって、
そりゃあ一番は
この男から声を掛けられたことだ。
その年は全国で127人も入社しており、
研修は何回かに分けて行なわれたそうで。
そんなワケで入社式当日まで、
お互い同じ会社に就職したことを
知らずに過ごしていたらしい。
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