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「・・・お前は本当に・・・」
「呆れましたね?うぅ、だから言いたくはなかったのに口が滑りました…」
呆れるのは勿論なのだが、なんだか彼のそんな姿が愛しくて仕方がない。
「全く…しょうがねぇなぁ。俺が最近サリサさんやカズサと仲良い理由、分かってない」
「何か理由があるんですか?」
「ある。俺が、2人と仲良くしてるお前を見たくないからだよ。俺の方と仲が良ければ彼女達だってお前に気が向くことないだろう」
ナダールが驚いたように目を見開いた。
「え?や…そんな事ありえないですし…」
「それでもこの村のゆるさ、お前だって知ってるだろ!いつ何処で何が起こるか分からねぇじゃねぇか!!お前はαで彼女達はΩ、俺の方がよっぽど不安だって分かりそうなもんだろう!」
実際カズサにはナダールを貸してくれないかと言われた事だってあるのだ。
それは2人が番になる前の話しだから完全に時効とはいえ、2人共がこのムソンの出身である以上、油断はならない。
「ただでさえ俺の体、女みたいに柔らかくないし触り心地悪いし…」
「それで、胸を気にしてたんですか?」
「悪いか!お前は本当、何も分かってない!」
そんな俺の言葉にナダールは満面の笑みを零す。
「私にはあなただけですから!浮気なんて絶対ないですから、安心してください」
「まぁ、これの理由がそんなんだったら、疑いようもねぇよ…」
そう言って自身の身体に散った鬱血をもう一度眺める。
「でも、これはさすがにもう少し控えてくれたら助かるな…」
「はは…善処します」
そう言って彼は笑う。
彼と暮らし始めて5年以上経過している、それでもまだお互い知らない事は幾らもあって、きっとこれからもこうやってお互いを少しづつ知っていくのだろう。
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