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寺院は、荒れ果てた空き地のような、ささくれた広い庭のその奥に、小さくそびえている。
建物自体はそれほど古くない。
しかしところどころ虫が食っていたり、薄汚い緑色の染みや、積もりに積もった埃がかむり、掃除の跡などまるでない。
ただ野放図に、ほったらかしにされているが故に、こうなっているのは明らかだった。
薄汚れた寺院の、その内なる奥には、腐乱した死体が転がっていた。
女性のものだ。
内臓部を大きく切り裂かれ、そこから腸などのはらわたが、外部にはみ出している。
当然血まみれだ。
目玉は半分ほど飛び出し、眼球が床に、まるで細い紐で繋がれたゴルフボールか、フルーツポンチの丸い具のように転がっている。
ボロボロに破られた衣服には、明らかに他の場所で付着したとおぼしき泥がところどころに付いていて、彼女がこの場所以外のどこかで殺されたか、または酷い目にあってここへ連れてこられて殺されたかの、何れかであることは、アホが見たってわかるだろう。
そのフルーツポンチの具みたいな眼球を踏みつけると、グチャという音がした。
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