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この死体屋という、人間の屑がやるような仕事のこと、組織との関係について、ギャラについて、そしてこれからの人生のことなど… 。
まあそこいらのリーマンの考えることと、そう大差ないことを、ぐちゃぐちゃ思ったにすぎん。
杏子との生活をどうするのか、だいたい金にうるさいあの女が、今の報酬で満足するのかどうか、あの女だって今のバーでホステスをする前は風俗で身体を売っていたんだし、とは言え、合法上のビジネスという点では俺よりマシだが、しかし俺のビジネスにそう文句も言うまい。
杏子の前の旦那は、とある組関係の鉄砲玉だったが、とうに死んだらしい。
俺とは、杏子が当時勤めていた風俗店で知り合ったが、元々風俗などそう行く方じゃないし、風俗嬢とはその場限りの戯れでしかないと思っていた俺が、妙にこの女とは、何かが合ってしまった。
最初会った時から、まるで昔からの知り合いのような懐かしさと、居心地良さを感じ、大して愛想のいい女じゃないのに、妙に心の底が癒されていくような気がした。
とある緊急事態から、携帯の番号を交換していたとは言え、二日後に、まさかこの女から電話がかかってくるとは思いもよらなかった。
だが最初はどうせ営業電話だろ、と思い、今忙しいからと言おうとしたら、外で飯でも食おうというお誘いだった。
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